今日の一枚、今日のひと言

趣味のことやドラマ映画の感想など書き留めておきたいこと・覚えておきたいことを記していきます

答えが出なかった、映画『ロストケア』

こんにちは。

2009年6月から「俺の邪悪なメモ」というブログタイトルで、はてなブログを運営していた罪山罰太郎さん。現在は(はまなか あき)名義で小説家として執筆活動をされていらしゃいます。その方が2013年に第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した、『ロストケア』の映画を観ました。

今日はちょっと重たい映画のお話。8月に観た映画の中で、とても考えさせられた映画です。私たち誰もが生活の中で直面するだろう、決して他人事では済まされない映画。ただ、私的には答えの出ない映画でもありました。

この原作を読んで俳優の松山ケンイチさんが、「是非、やりたい」と言った映画だそうです。相手役というか、W主演なのでしょうね。検事役には長澤まさみさん。松山ケンイチさんは『デスノート』のエルの印象が強烈で、大河の『平清盛』や現在の朝ドラ『虎に翼』など、一貫して固定した役柄・イメージのない「カメレオン俳優」さんです。

映画『ロストケア』は

「凍てつく太陽」などで知られる作家・葉真中顕(はまなか あき)さんの日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作の同名小説の映画化。訪問介護サービスに従事する青年が高齢者40人以上を殺害したというもので、まず、とっさに神奈川県の障害者施設の事件を連想してしまった私。障害者施設の大量殺人事件をモデルにした映画は石井裕也監督がメガホンをとり、宮沢りえさんと磯村勇斗さん共演で昨秋公開されていたようです。

原作はジャーナリストで小説家の辺見 庸(へんみ よう、本名:辺見 秀逸)さんの同名小説『月』。私は映画の『月』を観ていませんのでその是非については何も語るつもりはありません。

安楽死の選択

『ロストケア』を観る少し前に、TBSロンドン特派員で安楽死の取材を続けていた西村匡史さんの記事を読む機会がありました。スイスの病院で安楽死した迎田良子さん(64)との1年間におよぶ取材記事でした。彼女の生い立ちやその後の不運続きの人生、パーキンソン病との8年間の闘病生活が綴られており、なんびとであれその選択を否定できないものがあったのです。日本では認められていない安楽死の法制化を望み、考えるきっかけになればとご自分から取材を申し出たようです。

先ごろ民間団体によって行われた調査では、回答者の88.2%が家族が尊厳死安楽死を望んだら「受け入れると思う」と回答したというデータもあるそうです。ただ安楽死は神奈川県の障害者施設の事件のように優生思想に結びつく危険もあるわけです。

 

 

例えば、映画『ロストケア』の中で父親に懇願された主人公が泣きながら父親を手にかけるシーン。日本では親が子供を殺すよりも、子が親を殺すほうが罪が重いといわれていますよね。

葉真中顕さんはご自身が30歳の頃に祖父の介護をすることになったのが作品執筆のきっかけだったとインタビューで語っています。「祖父の介護は約1年。認知症の悪化とともにしんどさを感じていたのは確か」とおっしゃっているように、もっともっと長期化すると誰もが誤った方向へ豹変してしまう可能性を秘めていると言いたいのではないか、と感じました。

そして主人公の斯波宗典(松山ケンイチ)は最後の手段であった生活保護申請の受理が認められず、追いつめられてゆきます。介護される側、介護する側の両者を苦しみから解放すること、それは救いであって殺人ではない、と主張する主人公。

 

共感してはダメなんだけれども主人公の気持ちはわかるんだよね、と言いたいです。

それは私自身が20代後半で末期癌の父の闘病生活と、10年以上におよぶ母の入院生活を経験しているからです。

みなさんにもこの映画を観て考えていただきたいのです。それはもしかしたら貴方が今後、直面する問題かもしれないのですから。

 

 

映画『ロストケア』 2023年 114分

原作:

出演:松山ケンイチ  長澤まさみ  鈴鹿央士  戸田菜穂  坂井真紀 ほか

 

 

 

 

西村匡史さんプロフィール

1977年新潟県生まれ。TBSテレビ報道局記者。警視庁、横浜支局、検察庁、裁判所を担当後、2013年より「NEWS23」担当。東日本大震災や事件・事故の遺族取材から、グリーフケアホスピスなど「命」をテーマにした特集を多く手がける。また、死刑囚や死刑囚の家族など「加害者」側の視点に着目した特集も多い。『悲しみを抱きしめて―御巣鷹日航機墜落事故の30年』