今日の一枚、今日のひと言

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映画『戦場のメリークリスマス』

こんにちは。

若き日の坂本龍一さん出演の映画『戦場のメリークリスマス』です。
原作は南アフリカ共和国の作家、ローレンス・ヴァン・デル・ポストの短編集
『影の獄にて』に収録されたご本人のインドネシア・ジャワ島での、日本軍俘虜収容所体験記。
第二次世界大戦下のジャワ山中の日本軍捕虜収容所を舞台に、日本軍と捕虜の男たちの心の交流を描いた作品です。

実はこの映画は観たことがありませんでした。戦争映画だから見なかったというわけではなく、
この作品を作られた監督さんの他の映画も含め観たことがなかったのです。
でも、今年の3月に坂本龍一さんがお亡くなりになり
ローレンスを演じたMr.トム・コンティアメリカでナショナル・ボード・オブ・レビュー(1983年) - 男優賞を受賞。
イギリスでは坂本龍一さんが英国アカデミー賞-作曲賞、そして翌年の1984年、日本国内では日本アカデミー賞優秀作品賞、
優秀監督賞、優秀助演男優賞、音楽賞、美術賞、作品部門話題賞など高い評価を受けたことを踏まえ
一度は観ておくべき作品なのではないか、という思いに至りました。
作曲賞、音楽賞を受賞した坂本龍一さんの曲は、いかにも東洋的でなるほど、と頷けるメロディですね。

作品で坂本龍一さんが演じたヨノイ大尉には当初、三浦友和さんや沢田研二さんがキャスティングされたそうです。
おおー、確かに映画『魔界転生』の天草四郎を演じたジュリーの妖艶さはヨノイ大尉のイメージにピッタリ。
そしてデヴィッド・ボウイ演じるセリアズ役はロバート・レッドフォードニコラス・ケイジ等がオファーを
断ったため、大島監督がブロードウェイの舞台『エレファント・マン』のデヴィッド・ボウイを見て起用を決めたというエピソードが伝えられています。

激しい戦闘シーンは全くなかったのですがストーリーの前半から処罰のため、いわゆる割腹自殺&(首をおとす)介錯の衝撃的なシーンが映し出されます。
北野武さん扮する鬼軍曹(ハラ軍曹)が、上官のヨノイ大尉に「本部へは自害ではなく、戦死として報告してください」と助言をするシーンがありました。
「自殺では国からの恩給が出ません。故郷に年老いた両親や、乳飲み子を抱えた嫁を残してここに来ているかもしれない。
残された家族が恩給を受けられるよう、お願いします」
ヨノイ大尉は説明を聞いて頷き「わかった。戦死で届けよう」と言い、お骨にしてハラ軍曹がお経をあげる。
この流れが、この二人の会話のやりとりが、一番印象に残る、心に刺さった場面でした。
粗忽で乱暴きわまりない悪役だと思っていたハラ軍曹の、「鬼の目にも涙」を垣間見た瞬間です。

そしてヨノイ大尉は更迭され、セリアズ役のデヴィッド・ボウイが首だけを残した生き埋めの処刑にされても
自分の一存では助けることも逃がすこともできず、衰弱死する寸前に彼の髪の毛をナイフで削ぎ取り
敬礼をして立ち去る場面の何とも言えない憂いさ。
慣れない俳優の演技と緊張とで少し怯えたような表情がプラスになって表れていたとさえ思えました。


体験記を忠実に再現したのであればジャワ島での、日本軍俘虜収容所で敵国の捕虜との間に芽生えた友情というか、
心の奥底に残っている人間らしさのようなものが伝わってくる映画だったのではないでしょうか。


世界に目を向けるとウクライナとロシア、ハマスイスラエルの戦闘がいまも続いていますよね。
映画で北野武さんが笑顔で「メリークリスマス!ミスターローレンス」と呼びかけるラストシーン。
もうすぐクリスマス。
戦闘状態にある人々がお互いに「メリークリスマス!」と笑顔で言える日が来ることを願ってやみません。


キャスト
デヴィッド・ボウイ   (ジャック・セリアズ陸軍少佐)
坂本龍一        (ヨノイ大尉・レバクセンバタ俘虜収容所所長)
TAKESHI         (ハラ・ゲンゴ軍曹)
トム・コンティ     (ジョン・ロレンス陸軍中佐)
ジャック・トンプソン  (ヒックスリー俘虜長)
内田裕也        (拘禁所長)
ジョニー大倉      (カネモト朝鮮人軍属)
ジェイムズ・マルコム  (セリアズの弟 )
三上寛         (イトウ憲兵中尉)
アリステア・ブラウニング(カール・デ・ヨンオランダ軍兵士)

監督 大島渚
原作 ローレンス・ヴァン・デル・ポスト
日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドの合作映画  1983年公開